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March 04, 2010
フラット
わたしは自然に出来た立体にはふたつの種類があると思っています。
それはものがぐっとせり上がって隆起してできた立体と、周りのものがどんど
ん浸食されて一部の「硬いもの」だけが残った景色を見た時に感じる立体です。
おおくの場合、人の評価は隆起にしか目がいかない。目立つという事はそうい
う事だと思われている。
わたしは昔から「グランドキャニオン現象」という表現を使う。
それはどういう事かといえば、ある時代においてはほとんど「平地」というか
平凡としか見られていない人が、時代の風化に耐えて「一貫した姿勢」を続け
ているといつのまにか「隆起」に近いような目立ち方をする人やモノについて
そう表現するのです。
一昨日の2日に川崎和男さんが「COOL LEAF」と呼ぶ新しいデバイスの製品
発表をされました。
昨年の秋に桑沢研究所のイベントで審査員として同席されてから、わたしの
中で川崎さんと方がとても気になってしょうがない存在となりました。
いまさら川崎さんをわたしが語るのも陳腐ですが、改めてそのデザインの世界
に向かう姿勢に驚きを感じるようになりました。
川崎さんがどういう「立体」なのかを問えばたぶん大方の人は「隆起タイプ」
に分類というか評するのでしょうが、わたしはなぜか「グランドキャニオン」
に思えるのです。
わたしとその上の世代の優秀な資質をもったデザイナーは、その人生を企業の
為に捧げる事が「ふつう」でした。
わかりませんが川崎さんも自らに課せられた過酷な運命がなければ、企業の
なかで手腕をふるい続けておられたのではないかと思います。
企業は一見一枚の「プレート(岩盤)」です。そのプレートはそう簡単に「高
さ(位置づけ)」を変わってみられる事はありません。その中でどう立体して
いるかをだれも見ようとはしない。でもそういう事を多分受け入れる事も川崎
さんには可能だったというのが私の感じるところです。
そういう「立体視」をいったん離れる事によって俯瞰した時期があったと
思います。
わたしはそういう時期に川崎和男さんに電話をしたことがあります。
今から25年ぐらい前の事でした。自分が今後どうしようかと思っていた時に
ある方に紹介していただいたのが川崎さんであり、その時はじめて川崎さんが
川崎和男になったのです。
わたしは福井までお会いしに行こうと思っていましたが、ちょうど台風が来て
タイミングを逸してしましました。
わたしには電話を通して感じた「やわらかさ」を忘れられません。その後川崎
さんはどんどん世間で見聞きくるようになってどんどん自分から遠い存在と
なりましたし、メディアで読んだりする文章は、あの電話口の川崎さんとは
別の方のように思いました。 隆起の時期だったんですね。
ここにひとつの「誤解」があります。それは隆起ではなく、会社を離れて自分
の高さをいったんリセットされたところから「本来あるべき高さ」へ自分の
評価軸というか「立体視」を問い直す作業の時期だったというのが正しいよう
に思います。
自然物に対する「高さ」は厳格に定義されていますし、そこには国土地理院
という「リファレンス(標準)」を司る機関があります。
ところが人。わたしたちデザイナーにとって国土地理院は存在しません。
デザイナーはチカラを評価するためにコンペに作品を問います。わたしが不勉
強なのかもしれませんが、川崎さんがコンペに問うた形跡をうかがうことが
ありません。(多分学生か社会人になったばかりにはそういう腕試しはされて
いたと思いますが)
プロのプロダクトデザイナーにとって評価されるべきは「製品」にある。
それは単に自分が『こういうものを考えました』ではなく、製品化にあたって
どう人を説得し感動させ実際の製品にこぎつけるか、そこの「精神力」「説得
力」「知識力」つまるところ「人間力」を総合的に判断されるべきだろう。
そう考えられたのだと思います。
プロダクトデザイナーにとって関わった製品を評価する「国土地理院」を作ろ
うと尽力されたのがグッドデザイン賞という場であったのだと思います。
わたしはリファレンス(標準)を作る仕事がそう派手でも報われる仕事でも
ないと思っています。伊能忠敬は後世「見えている人物」ですが、当時はたぶ
ん計測器を背負って海岸べりを計る姿は奇妙でなにをしているかを知る人は
いないでしょう。
じゃあ計測作業をしやすいようにかっこいいジャケットを作って「計測してい
ます」と表示される「軽い」電光掲示板を作るのもデザインだし、そういう
つらい作業も「報われる」ようにすべきじゃないのか。 そう考えられたのか
と想像の羽を広げます。
わたしは今デザインを巡る世界が沈静化していると感じています。
そういう中にあって継続的にそのエネルギーを出し続けていた川崎さんが目立
つのは道理だと思いますしそれこそがグランドキャニオンと思うゆえんです。
ここで最初に紹介した「COOL LEAF」の話に戻るのですが、そのデバイスが
「フラット」であるのは偶然だと思えないのです。
平面が立ち残ったグランドキャニオンの上(頂上)は本来平地でフラットなの
ですから。
11:47 AM



