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February 26, 2010


材料とのであい

新潟の燕商工会議所が主催する「燕市物産デザインコンクール」でPrimario
の「テープカッター」が協会会長賞を受賞したと知らせが入りました。

うれしいです。さらにうれしいのは出してみてはどうかというお話がいただけ
る事です。

昨年はJIDAのデザインミュージアムに選定していただきましたが、その後海
外のデザイン賞にエントリー依頼があったりしてこのテープカッターPrimario
の広報担当になったようです。アイコンですね。

この製品はテップカッターの「かっこう」はしていますが、その値段もそうで
すが、「使い勝手の良い値段も手頃で普及するもの」「世界最高の切れ味」い
うのが課題であればアウトだと思っています。 

そうであればわたしはそれに対応した「別の答え」も用意できると思っていま
す。

この製品には「前の物語」があります。

わたしは80mmをデザインするにあたってそのかたちを実現する為にある
メーカーを紹介していただきました。それが電信柱に使われている絶縁体であ
る「碍子(がいし)」を作っているメーカーでした。(その昔ここで写真入り
で紹介したことがありますが)

どうして碍子メーカーかといえば、碍子は材料(土)を円筒形にしてある程度
固まったものを、ろくろにかけて「切削(削り込み)」をして碍子のかっこう
にしていきます。その過程の中で「内側」を削り込んで行くのですが、その奥
の方まで削り込むテクニックを使えばあの80mmの底の削り込みが出来るん
じゃないかという話になったわけです。

当時はまだ「底に蓋をする」という事を考えていませんでした。
結局、材料も重いし器には適さないということで諦めましたが、「碍子」とい
う素材感とその「重さ」をうまく使えないかと考え、まったく別の製品を思い
つきました。

それが「テープカッター」だったのです。
テープカッターは置いて使う分にはそうとう重くないとテープの引き出す時に
かかるチカラで本体が持って行かれるのです。

つまり持って行かれない重さに碍子が向いていると思ったのです。
次に問題となったのが「歯」でした。 わたしは碍子に「溝」をつけてその
溝がある断面で「歯」に変化しないものかと考えた訳です。

しかしもともと土ですし表面に「釉薬(ゆうやく)」もかかった仕上げになる
のでセロハンテープを「ぱしっと」切るのは困難なわけです。

じゃあふつうの製品のように「歯」を別物にして埋め込めば良いんじゃないか
と思うでしょうが、それでは「納得」しないわけです。そうなると結局それま
での「プラスティック」を「碍子」に置き換えただけでしかない。そう思うと
ころがわたしなんです。

そういう妙なこだわりがネックとなって結局そのアイディアは「お蔵」に入り
ました。

それから数年後にタケダとの出会いがあったわけです。
なにせステンレスは「重い」し、なにより「歯」の材料そのものです。(ステ
ンレスが使われている事は少ないですが)

まあ、この結論にいたるまでアルミで作ったものまでいくつもの試作がありま
す。Primarioの中で試作した数がもっとも多いのがこのテープカッターです。

「ステンレス加工技術の粋でできたF1カーを作ろう」というのがスローガン
でした。

先にも書きましたが「リーズナブル」というのであれば回答は別にあります。
ゆえにこの製品をテープカッターの定義で判断されると「アウト」だと思いま
すが「テープも切る事が出来るバランスのいいステンレスの塊」というのが
わたしの定義です。

ここで柳宗理さんのバタフライチェアーを引き合いに出すのも唐突かもしれま
せんが、実際にあのスツールを使ってみるとあまり使いでの無い事に気がつき
ます。座面も大きくなく左右に体重はかけられない。なにより「脚立」がわり
になりません。食器棚の上に載せたテーブルコンロを取る台にもならない。
ずっと座っているのもつらい。値段も安くない。そういうのはまったく雑誌で
は知る事の出来ない「事実」です。 これは悪口じゃないですよ。それをこえ
てあまりあるのがあの佇まいの美しさです。

わたしはずっとながめながら(座りながら)思いました。柳さんは「プライ
ウッド(成型合板)」の素材(加工)の良さと可能性を広げる事を思って
あのスツールをデザインしたことを。 日頃は使い勝手を重視し試作を重ねる
柳さんがあえて「入れるもの捨てるもの」を案配して作り上げた事を。

なによりあのスツールの存在がその後多くのデザイナーを触発し、スツールや
椅子が生まれたと確信します。

かたちは違えどわたしもその一人です。その思想があのテープカッター誕生に
力を与えてくれたのです。

こんなに長文になるとは思いませんでした。


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10:23 AM