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August 02, 2009


新製品のように

1WA122.jpg


デバイスタイルのサイトに写真の12本用ワインセラー「WA-12」が製造終了
というお知らせが出ていました。

とても残念な事ですが、ただ売り場から消えていくのをそのまま見送るだけで
は、「ワインセラー」という日本でそれまで根付かなかった市場を開拓しがん
ばってきたこの製品に申し訳ないと思い書く事にしました。

デザインを手がけたのは今から7年前の2002年の事でした。
わたしもそうだし設計する人もこの製品を製造するメーカーにとってもはじめ
ての製品でした。

なにを「標準」にしていいのか皆目見当もつかない状態の中でわたしがよりど
ころにしたのが、かつて多くの製品をてがけた「音響機器」でした。

ワインを愛好する人はどんな人なのか?わたしはひとつの仮説を立てました。
今味覚に興味のある人がどういう少年時代を過ごしたのかどんな青年時代を
過ごしたのか。そこの物語に焦点をあてて考えました。

最初は「科学」に興味があって、少年雑誌の付録についていた「手動電蓄」
やゲルマニュームラジオを組み立てたりして、そこからトランジスタラジオ
ステレオセットに興味が動いて、そこから音楽そのものものに「はまって」
つまり「聴覚」ですね。 そこから映画に移っていって「視覚」ですね。
途中にはパソコンもあったでしょうし、だんだん食べる事に興味が移行して
「味覚」こそが人生の楽しみという世代になっていて、ワインはさらに香り
という「嗅覚」にも関わってきます。

端的にいえば「ずっと好奇心が強くて収集好き」の人がワインという世界に
は多く集まっているという「仮説」です。

そしてわたしはその人たちの「若い時代のあこがれ」であった音響機器のデ
ザインをそこに当てはめた訳です。

わたしは工場にいって『これは冷蔵庫ではありません。』と何度も説明しまし
た。『水の無い書斎にこそ似合うものであって本や家具と調和するデザイン
(仕上がり)でなくてはいけないのです。』

このWA-12は少し傾いています。それはワインのボトルについているコルク
がワインに浸かる部分と空気にふれる部分のどちらも確保する「傾き」なの
です。

ワインパーティーをする情景を考えて「タイヤ」をつけました。普段は部屋の
コーナーにあって「少し」移動させてこのセラーの上でコルクをあけたり
テースティングをしたりそんな場にふさわしい「物語性」のためのタイヤで
す。 タイヤはこの製品のために作られた特注品です。

扉とハンドルの間に「引き出し」があってその中に「コルク抜き」やフキンを
いれたり出来るのですが、実はこの「引き出し」は苦肉の策から生まれた
アイディアでした。

温度調整のためのスイッチ基板と冷蔵部分の断熱材の「距離」が必要である
中でその「間」を埋める為に考えついたアイディアでした。

いや蘇りますね。7年経っても。 わたしはこの文章を買っていただいた方々
の為に書いています。 たぶんきっとこの製品は10年経っても20年経っても
いつも「新製品のような」空気をまとった製品であるとデザインしたわたしが
思っている事を伝えたいからです。


12:00 PM