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January 20, 2009


無題

先日、ここでも三原さんがテープカッターについて書かれていた事にふれたの
ですが、新たなエッセーでも登場しています。

というかあのテープカッターの話題は、なんらかの「箱」を開ける結果となっ
たのです。

箱と言えばPrimarioは「箱」を作るところからのスタートでした。

当初、タケダさんの技術を使って「なにか製品」を作ろうと考え始めました。
まあ最初は、通り一遍のアイディアしかわいてきませんでした。なにをデザイ
ンしても既に世の中に存在している。そんな感じでした。

そうこうする間に考えついたのが「何を作っているとタケダさんが楽しめる
か」という事でした。

年に一度、「技術発表会」のようなイベントがあって会社の腕前を世間に披露
したりされているのですが、ただ小さいモノが出来るとか仕上がりがすばらし
いという「部品」を見せてもそうアピールするものはないように思いました。

わたしは金属加工品の「F1カー」を作る事を提案しました。
走るわけじゃないですよ。「いっちゃった」デザイン製品を作れば、注目も
されるだろうし、その製品が売れなくてもタケダの技術力の高さはアピール
できるだろうと考えたのです。

そこでわたしがお願いしたのが、アルミの塊を「球」と「円錐」と「直方体」
で作る事でした。ただの塊じゃなくて、厚みを3ミリぐらい残して内部を
くり抜いて空洞にしてそれぞれ半分ぐらいで分かれる「容器」にすること
でした。

「F1カー」を作ると言っておきながらただの球だったりするのが、おかしい
のですが、そこまでシンプルなカタチだったら誤摩化しがきかないと思った
のです。

ここでタケダさんが『そんなの難しくて面倒だ!』と話が出たらテープカッ
ターもトレイも多分生まれなかったと思います。

その「くり抜かれたただの立方体」を作る事に『面白そう。できますよ。』
そういとも簡単にオッケーが出た時にこのプロジェクトは俄然「笑っちゃう
ぐらいにばかばかしい」方向へ走り出しました。ここのスピードがF1でし
た。

そして程なく「ただの直方体ただし肉厚3ミリしかも蓋式」のアルミの塊が
仕上がってきました。

びっくりしました。すごい。一見塊なのに軽い。そして一体感も良く出来て
いる。金属加工の技術おそるべしでした。

わたしは「ぴっかぴっか」にしたかった。なぜなら燕三条は磨きの技術の
高さで日本はおろか世界にその存在を知られているのですから、その地の利
を生かさない手は無い訳です。

そこでやわらかいアルミを使う事からステンレスに素材がシフトしました。

最初はご存知のように「板を曲げた」製品をリリースしました。
しかしタケダさんが「より楽しい」のは切削加工にあると知り、ステンレス
の「ムク材」を使う事にしました。 F1のレギュレーション(規制)がさら
に「はずれた」わけです。タイヤは6輪でもウイングは前でも後ろでもなんで
もありとにかく「速く走る」その一点でした。

その中でかねてからいろいろ試行錯誤をしていたテープカッターを「ムク」で
考えたのがあの製品です。

いろんな材質でテープカッターを考えていましたが、いつもネックは「刃」と
テープを回転させるリールの素材でした。どちらも本体と材質が変わってしま
うのが普通です。

それが「刃」そのもので本体を作るわけですから「3」が「2」に減ったわけ
です。それなら「2」を「1」にしてしまえと多少の不便(?)を承知で
リールも取ってしまいました。

これらの製品達は、タケダという金属加工メーカーで直接していなければ
生まれない。なおかつ挑戦する事におっくうであれば違うカタチの製品群に
していました。

デザインがはじめにあったわけではありません。「やってみましょう」という
言葉が最初にあったのです。

すでにしてタケダさんには『こういうモノは作れますか?』というお話が
プロジェクト以降増えたと聞いています。

製品を作るだけでなく会社のイメージを作る事も仕事なのかと思っています。


08:28 PM