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September 26, 2008


長い仮住まい

実家に帰る道、そこをまがると大きな塀の大きな家があるべきその場所に家が
無くなっていた。

その当たりにある平均的なサイズの家を6軒程足した大きさのその大きな家が
忽然と姿を消してショベルカーの2台が暗闇の中、平原で遊ぶ赤ちゃんライオ
ンのように転がっていた。

わたしの家が大阪の市内からこの場所に引っ越しをしたのは、東京オリンピッ
クの前年にあたる1963年の事でした。

その大きな家が建っている場所はわたしの家が越してから10年以上空き地の
ままになっていました。 聞くところによるとその空き地は道路建設予定地で
駅から一直線に伸びて家の後ろにある川を越えて大阪市内へとつづく計画らし
い。

でも待てども待てどもその工事は始まらず、「道路予定地」に家がつぎつぎ建
ち出して「最後の砦」みたいな感じだったその空き地にも家が建った。
その大きな家だった。なにせ大きなガレージがあって『あのガレージうちの家
よりおおきいね。』と話したものでした。

しかしあまりにもそこはまわりと隔絶したサイズと、「道路が通るかもしれな
い場所にある」ことからずっとふしぎな家でした。

「道路計画が無くなった」と聞いたのはほんの数年前のこと。40年間いつ
立ち退くのかと、この辺りに住む人はずっと頭のどこかに有ったはずです。

その大きな家の住まい手は、老夫婦ふたりとなったので広い家を手放して暮ら
しやすいマンションに移ることにしたそうです。

あそこにいた30年間は、そのふたりにとってずっと仮住まいな気持だったの
ではないかと想像したのです。そして「道路がこない」ときまった事によって
手放す決心と「住んでいた」という安堵を得たのかもしれません。


06:06 PM