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August 10, 2008


情緒工学-エモーショナルエンジニアリング

「センスの良い技術者にデザイナーはかなわない」

会社時代に、わたしはそういう「結論」に達していました。

わたしが在籍した頃のケンウッドはステレオ用のチューナーの優秀さで世に知
られていました。その会社にあっても「別格に優秀」といわれていた若い技術
者のAさんと一緒に仕事をさせていただいたことがあるのですが、

Aさんは、当時最新のチューナーの方式についてこんな説明をしてくれたこと
があります。『たとえば水の入ったコップがあって、常にコップ全体を計るの
は大変だけれど、コップ自体は一定だからコップからあふれた水だけを計測し
ても同様の結果が得られるし、その部分を詳細に計る方が要領よく精度が上が
る。』といったたとえ話しで、その「ムツカシシイ最新技術」を公式も数字も
用語も使わずに、技術に明るくないわたしでも「目に見えるように」説明して
くれたのです。

今でこそ「たとえ話」でモノや状態を説明するのは、人を説得する「方法論」
として定着している感がありますが、当時「難しい話は説明も難しい」と思い
こんでいたわたしにとっては、その優秀な技術者のAさんの発想の柔軟性と知
らない人に対する話の「やさしさ」は驚きでした。

その経験以来わたしもデザインをどうやって日常の生活や人間の感情になぞら
えて説明するかを常に心がけるようになったのです。

ソニーに入ってプロ用の製品を主に設計していた厚木工場に配属されプロ用
のデジタルテープレコーダーやマイクロフォンのデザインをしていた時期が
あります。

最新の技術のかたまりのような場所でしたが、そこでも技術者のセンスを
多々感じるのことがありました。

そして優れた人ほど「やさしく説明できる」というか人として柔軟であるこ
とをあらためて感じました。 

今も民放各局で使われているワイヤレスマイクは、その当時担当したものが
未だに使われていますが、そのベースになった(今でもその機種もテレビに
登場しますが)非常に細いスティックタイプのマイクがあるのですが、その
マイクに付属する充電用のケースとかアクセサリー類がとても「無駄の無い
カタチ」をしています。

実はそれらのものはある技術者の方が「デザイン」というか設計したまま
のカタチだと聞いて相当にびっくりしました。(マイク自体もその技術者の
デザインだったと思うのですが、記憶があいまいです)

ソニーのデザイナーは優秀ですが、それを支えていた技術力はそれにもまし
て優秀だったと思いましたし、その出来事以来「技術はデザインの領域を
すでに包み込んでいる、じゃあデザイナーはどう技術の領域に入れるのか」
を考えるようになりました。

その後プロ用から一般に売られるオーディオ製品の担当に移動してからは
技術的な提案性をもった「デザイン」をするようになりました。

回転したり振動する部品と基板をふりわけてその間に仕切り板をつけた
レイアウトや、製品の重量といい音には関係が薄いと思われていた時代に
剛性が高く質量も重いCDプレーヤーを提案したりしました。

それが本当に「効果がある」かどうか正解かどうかは裏付けはなかった
のですが、わたしの中で直感として感じる「技術」として、そういうもの
ではないかという構造や構成を「仮説のカタチ」にして提案する事によって
技術者とデザイナーの間にあたらしい理解が深まるように思ったのです。

12:34 PM