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April 11, 2008


教材

わたしはよくデザインを「住宅選び」に例えます。住宅というより賃貸のアパート選びで
しょうか。

『日当りが良くて、広くて、駅から近くて(商店やコンビニの近さ)、家賃の安い「物件」
というものは存在しない。その三つ(もっとももっと条件はいっぱい有りますが)の内ど
れを優先して考えるかを明確にしなくては、なかなかに決まらない。』

昨日、pdweb.jpで±0のコーヒーメーカーの使用レポートが掲載されました。

わたし自身使用した事はありませんが、5つのコーヒーメーカーのデザインに関わったの
でそこでの評価は、「おいしさ」を除いては『そうか』と腑に落ちたわけです。

コンパクトさを表現するには、注がれるポットは透明な方が断然有利です。
さらにいえばそのポットの中にコーヒーの粉を入れるカップがポットの中にあればもっと
小さく設計出来ます。

デバイスタイルのサーモマグコーヒーメーカーがコンパクトなのは、あの「円錐」という
カタチが中に入っている部品類がちょうど収まり易く無駄が無いからに他なりません。

なにより「サーモマグカップ」のおかげで温める機構が省略出来ているというのも大きな
メリットですが、残念ながら見た目の大きさに比べて入れられるコーヒーの量が少なくな
ってしまいます。

あのカタチはコーヒーメーカーのデザインを考える上でリファレンス(基準)のひとつに
なっているとは思いますが「賃貸」でいえば「広い」という条件を抜いて考えたわけです
から『内は6人家族なんで3人用の住宅はかっこよくても難しいのです。』という人もいる
でしょう。これはクルマに例えると比較的安き(安くはないですよ)なツーシーターのス
ポーツカーかもしれません。

先の±0を考えると日当りはよくないという表現になるかもしれません。(ガラスで日の
通りが良いので不思議ですがガラスは入れた瞬間から外気の影響でどんどん冷めて行きま
す)補う為に「ヒーター」が稼働するわけですが、『わたしは一日の大半を家で過ごすの
でやっぱり自然のお日様でなきゃね』という人はちょっと困る。

サーモマグもMAデザインも、日当り(ステンレスで日が通らないのにね)を優先して考え
たものなので(抽出されたコーヒーを温め直すと煮詰まるのでだんだん味が濃く苦くなっ
てしまう)のは「住宅選び」の優先順位で言うともっとも大切にしたのですが、「断熱層」
が熱くなってしまったので「住む面積にくらべて外壁が大きく外に広がった」わけです。

使い勝手で言うとコーヒーの粉を入れるカップが中にあるとコンパクトにはなりますが
「寝る時」には、家財道具を家の外に運び出す事になるわけです。

pdweb.jpのこれまでのレビューを見る限りもっとも総合的に「リーズナブル」な「物件」
は、柴田さんのデザインした「ZUTTO」ではないかと思います。

「家賃」(実売で4000円弱)は安いし、見た目も実際もコンパクトでかわいらしくまとま
っていてあらかたの部品も取り外して洗えるしつまり「生活し易そう」です。

唯一「光熱費」のこと(ヒーターで温める方式である)がありますが、入れたコーヒーを
さっさと飲んでしまうのであればとてもいい「回答」に思えます。

かたちのイノベーティブ(革新性)でいえばサーモマグや±0なのかもしれません。もちろ
んMAも尖ってます。そして「おいしいコーヒー」が入るという点で優れています。

多分、お店で並んでいるコーヒーメーカー群をみて上に書いたような「洗濯の格闘」をデザ
イナーがしているとはだれも思わないですね。 わたしも多分「この世界」に入って企画や
設計の方の苦心や工夫を聞かなければ、そういう事は想像もできなかったと思います。

「教材」と書いたのは、「デザインを知りたい」と思ったり「デザインを学びたい」と思っ
ている人には、ちょっと金額と場所はいりますが、是非とも「複数のコーヒーメーカー」を
買って自分で使って見て欲しいと思ったからです。そこにはデザインの「抽出(エッセンス)
が詰まっていると思ったからです。 もちろん「デザイン好み」というのであれば全然ひと
つの製品を選べばいいことです。

それにしてもジャスパーモリソンや深澤さん柴田さん鄭さんといった面々が「コーヒーメー
カー」というある意味「煮詰まった」市場でにつめ(見つめ)直すとはだれも想像してはい
なかったでしょう。

09:51 AM