« 20号 | メイン | 7センチの »

March 26, 2008


条件

この数日、わたしが関わった製品の使用レポートや「使用実感」が三つインターネッ
トに掲載されました。

ひとつはpdweb.jpに掲載されたMAコーヒーメーカーの使用レポートです。

レビューの内容は、もちろん読んでいただく事にしますが、わたしは原稿を見させて
いただいた時からとても良く出来たリポートだと思いました。

すごく褒めている訳ではないですよ。逆に「使いにくい」と明言されていて、ふつう
であれば喜んでいるのは関わったデザイナ−としてはおかしいかもしれません。

しかし『ほんとに使いづらいなあ』と言いながら顔には笑みがある。そういう空気が
リポートから伝わって来ました。

コーヒーメーカーを何機種もレビューされているうちにそこにあるデザインをするに
あたって色々な条件や目的が隠れている事が、今回のMAを通してあきらかになって
いく様を読み取る事が出来るからです。

「菱形」のコーヒーメーカーの目的は、「おいしくコーヒーが入れられて、それを長
い時間煮詰め直す事無く熱く楽しめる為の道具」につきると思っています。道具。

あまりそのことに気がついていないかもしれませんが、デザイン家電と呼ばれるもの
の中で作られた最初のコーヒーメーカーは、各社「保温ポット」が付いていました。

それが次の世代になってことごとく(といっても二社ですが)「ガラスポット」に戻
っています。 (戻るというのはこれまでも多くのコーヒーメーカーでガラス製のポ
ットが主流だったからです。)

外観としてみた場合、本体の大部分(半分近く)を占める事になるポットが「不透明
(ステンレスやプラスティック)であるよりも「透明」である方が「軽く」「明るく」
そしてすっきり見える事は自明の理です。

そしてなにより「ステンレスのポットは高価である」ということです。
デバイスタイルのサーモマグコーヒーメーカーの「サーモマグ」はマグだけで購入す
ると4000円します。本体込みで9500円ですからマグにかかる費用の高さがわかるの
です。

わたしはMAをつくるにあたってメーカーとのディスカッションの結果「見かけのスタ
イリッシュさ」よりも「コーヒーを長くおいしく楽しめる」という理由を受け入れま
した。 それは正論だと思ったのです。

「凱旋門」と名付けていたコの字型をしていたデザインは、1/6円形の「二層式のス
テンレスポット」は製造が難しい(そりゃ難しいです)という事で断念しました。
6杯分のステンレスポットをつつむ三角は大きくて「ハンドル」がどうしても必要だ
からです。菱形が「生き残った」のはハンドルを三角形の「中」で処理出来たからに
他なりません。

あれが単純に一層もしくはプラスチックの二層で「少しはガラスよりは保温性がある
かな」という事でよければどちらも実現出来ていたし、菱形もコンパクトになってい
ました。

デバイスタイルのサーモマグがどうしてすっきりしたデザインに出来たかと言えばポ
ットが「コップ」で良かったからに他なりません。あれが「6杯はいるポットにして」
というオーダーだったらあの単純な形状は生まれなかったでしょう。

まさに「条件設定のおかげ」です。

わたしはよくデザインを部屋探しに例えます。『駅から近くて、安くて、日当りの良
い部屋というのは見つけられない。』『なにを望むか』そこに尽きます。

MAのそのリポートで『おいしく入る』と評されています。わたしはその言葉を望んで
いました。そしてそう書かれていた事にとてもうれしく思いました。(実際このコー
ヒーメーカーで入るコーヒーは深いものがあります。)

三つともここで書こうと思って書き始めましたが、まずはコーヒーメーカーでとどめ
ます。

09:30 AM