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March 26, 2008


7センチの

以前、ふるーい「工芸ニュース」という雑誌をおよそ40センチ程持っていました。

古いのは当たり前で最後の号ですら1973年なので、古書店で買い集めていた80年
代はじめですら、すでに古かったのであります。

40センチというのはなんとも本の表現としては変ですが、なにせ一冊が厚みにして
7ミリから8ミリ薄いものなら数ミリしかない雑誌でありました。だから50冊以上は
あったのだと思います。

白黒の古色蒼然とした写真が多くて、すでにカラーで知っている製品をくらべると
それだけで時代が10年ぐらいは過去にいってしまうそんな感じの雑誌でした。
(中身にくらべて表紙だけは、その時代のトップを走っていたグラフィックデザイナ
ーが毎回交代で担当していたので、時代をこえてかっこ良かったのです。)

わたしはその40センチを5年程前にデザイン書を多く扱われているショップの方に
すべてひきとってもらいました。 たまたま入れ忘れていた数冊を除いてわたしの
手もとには残っていません。

しかし厚さ7センチの1977年に発行された「工芸ニュース 総集編」だけは、取っ
てあります。

その長い工芸ニュースの歴史を抜き出した貴重な本です。当時の値段で1万円貴重
かつ高価なものです。

10冊の分冊がひとつのケースに収まっていますが、時々はその中を見るのです。

「プロダクトデザイナーは文章が難解で面白くない」多分にあたっていると思って
いたのですが、こうやって読み直すとそうでもないのです。

ひょっとしたわたしが経験を重ねて多少は背景が見えて来たからかもしれませんが
結構「読める」のであります。

以前にも佐藤章蔵さんの文章がロマンチックともいえる時代を感じさせない文章で
おどろいた事を書きましたが、また今回なるほどと思ったのが、現在も現役で活躍
されている渡辺力さんの文章です。

「書く」というスタンスは往々にして「書いたる!」「書き切る」「自分は置いと
いて」そういう事に陥りがちです。

しかし渡辺さんの文は「自戒の念」つまり『いやーほんとに反省してしまう訳です。
(これはわたしの表現ですが)』そういう所からスタートしています。

英単語も頻繁に出て来ますが、それはその「語彙」そのものが日本にまだ確定され
ていない用語なのでしょうがないし、それを最小限でとどめる気持となによりその
英単語の意味をしっかり咀嚼している渡辺さんの聡明さがちゃんとやさしい文章な
がら伝わって来ます。

1952年に書かれた(わたしも生まれてません)その文章には今も健在でやさしい
まなざしの渡辺さんがずっとそういうスタンスで仕事や社会と向かわれておられた
事を今更ながらとてもうれしく思ったのです。

7センチ大事です。

10:55 AM