Archive of April 2016

April 30, 2016


さじを投げない

「匙(さじ)を投げる」という意味は「救済や解決の見込みがないとして

諦める」という事ですが、これは昔(今も)お医者さんがクスリの調合

を「匙(さじ)」でしていたことに由来します。

しかしどうもその「さじ」には別の意味があるのではないかと思ってお

りました。

そこで浮上したのが「些事(さじ)」という言葉でした。

些とは「いささか」「すこしばかり」という意味ですがようするに些事

とは「取るに足らないささいな事」です。

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日常は「些事」だらけです。

今朝も事務所のゴミを出したり、玄関先をはいたり、領収書をフォルダ

ーに入れたり書類を作ったり、お茶を入れたりと結構いろんな作業があ

りました。

あんまりというかまったくデザインとは関係の無い仕事もごっそりと日

常にはあります。

しかしこの些事が片付いていないと頭の中に「澱(おり)」のようなも

のが蓄積されてそれがデザインのアイディアを考えるときの支障になる

事をこれまでの経験で判っています。

逆にいえば日常の「些事」がちゃんと出来るとなにか清々しい気持ちに

なって机に向かえたりもします。

日常を大切にするのは、仕事の基本かなと思います。

「さじを投げない」。

デザインの基本の基本は絵でもセンスでも無くてそういう面倒な事を前

向きに捉えて処理する事かと思います。

プロダクトデザイナー

秋田道夫

9:57 AM

April 30, 2016


チョイス

「チョイス」

先日若い設計者の方から、『どうして判断が早いんですか?

それは経験からくるものですか?』と聞かれました。

わたしは『いや、まずどっちを選んでも同じようなものだ思

っているんですよ。どっちを選んでもまったくの正解なんて

いう事もないし、まったくの失敗も無いと思います。

もし片一方が、ピカピカの正解だったらだれも迷わないわけ

で、迷うというのはどっちもどっちだからでしょ。』

『大事なのは、選んだ事を四の五の言わないで、「正解」に

していく努力をする事だと思います。』

プロダクトデザイナー

秋田道夫

3:09 AM

April 24, 2016


暮らしとデザイン

メンテナンス.jpg

今月から始まったJ-WAVEの新番組「UR LIFESTYLE COLLEGE」

(日曜日の18時から放送)に来月出演します。

番組の中に様々なジャンルのエキスパートに暮らし方を聞くというコー

ナー「GOOD LIVING COLLEGE」がありそこでわたしの話が流れます。

(まだ放送日は決定していませんが録音は先日終えています。)

自分で「エキスパート」なんて書くのもなんですが、雑誌でも「デザイ

ン雑誌」では無くて一般誌の取材が多かったりするのですが、たぶんデ

ザインと自分の関わり方に「客観性」を感じてもらってデザインを判り

やすく「解説」してくれそうな「気配」があるのかなと分析します。

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先週、以前ここに書いた愛知教育大付属岡崎中学の新3年生の方4人が事

務所に来てくれましたが、そこでお話ししたのは『デザインは整理から

はじまる』という事でした。

今有るものを調べて「なにが足りてなにが不足しているか」それを分析

する事がそもそも「デザイン」です。

別にカタチが大幅に変化しなくても使う人にとって便利になればそれは

立派なデザインです。

事務所でお話を終えた後一緒に六本木ヒルズに行って実物のセキュリテ

ィーゲートを前にして「デザイン意図」を説明しました。

その一週間後にまたヒルズに来る事になった次第です。

一昨日には、大阪デザイナー専門学校で「FORM SCHOOL2016」の一回

目を開きました。

昨年参加してくれた新2年生の方もまた聴きたいと言ってくれたので総勢

60名を越す授業になり嬉しい次第です。

実は当日学校に行く前に通った大阪駅の改札で、ICOCAのチャージ機が

メンテナンスしている現場に遭遇しました。

作業をしている方に『メンテナンスしやすいですよ。』と言っていただけ

て嬉しかったわたしです。

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わたしはデザイナーになりたいわけではなくて「デザインをする人」にな

りたいと思っています。

そういった意味では「デザイナー」のエキスパートではなくて「デザイン

のエキスパート」を目指している訳です。

プロダクトデザイナー

秋田道夫

12:17 PM

April 1, 2016


10年目の「技術のF1カー」

今日4月1日からタケダデザインプロジェクトが事業部に昇格します。

プロジェクトを統括している高地さんから電話を頂いたのは、10年前

の2006年だったかと思うのですがそれは10年ぶりの電話でもありまし

た。

高地さんとの付き合いは、わたしがデザインしたソニーの「MDラック」

を以前高地さんが所属していた会社で製造していただいた事にはじま

ります。

10年ぶりでしたが高地さんの事はよく覚えていました。高地さんの記

憶にもわたしはしっかりとあったようで、『なにか新しい事をするなら

アキタさんにデザインをお願いしよう。』と決めていた事を後に伺いま

した。

タケダは「金属加工業」の会社として地元の燕三条でも品質の高さと誠

実な仕事ぶりでよく知られていました。

業績も堅調で、その後に起きたリーマンショックや金属材料の高騰にも

しっかり実績を伸ばされていますが「本業が順調な時に新しい別の柱」

を作るべく高地さんが考えたのが、パーツの加工でなく「製品」を作

る事でした。

その製品のデザイン依頼する連絡を頂いたと言うのが、プロジェクト

の始まりです。

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タケダの会社兼工場は、そこからクルマで15分程郊外に向かうのです

が、工場の周辺は広大な田の真ん中に今もありました。

さっき見た街の印象にまだ気がいっていたわたしですが、その工場に

入って金属加工機の新しさと多さとその稼働率の高さに驚きました。

高地さんからの注文は「白紙」でした。

要するにわたしがその「解答用紙」になにかを書く事でした。

まずわたしが考えたのは、ここにある最新の機械とこれまで積み上げ

てこられた加工技術とiPodのケースで有名になった磨き屋シンジケー

トの磨きの技術を使えば「これまでにない新しい製品が生まれる」と

いう事です。

毎年東京で開かれている「加工技術展」に出展されている事を伺った

ので、それではまずは、「販売も可能なタケダの技術サンプル」をま

ずは作ろうと考えました。

そして生まれたコンセプトが「技術のF1カー」でした。

つまり、高いブランドイメージを構築出来る凄いものをカタチにする

事でした。

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「技術のF1カー」の代表作が4万円もする「テープカッター」ですが、

実はタケダの自社工場で作っているからの4万円であって、もし製造

を別の工場に依頼していたらまったくその値段では収まらない「さら

なるとんでもない」ものです。

その「とんでもない製品」群は、リーマンショックの直後に発表する

というある意味「最悪」のタイミングからスタートしました。

「なにをしてもモノが売れない時代」なら「はじめから売れない覚悟

でモノを作る」というのは、なかなかに痛快なコンセプトだったと思

います。

その「とんでもない製品」はこれまでに見た事の無い景色を見せてく

れました。

それまで近寄りがたい高級品を扱っているお店だと思っていたものが、

Primarioはそのさらに上を行くものでした。

おかげで発売直後から日本を代表する文房具店である伊東屋や丸善で

取り扱われる事になったのですが、たぶん「そこそこ売れそうな製品」

群であったら難しかったでしょう。

F1カーは、そのとんでもないスピードのおかげで相手を突き抜けた先

にまで走り抜けていました。

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リーマンショックの直後に発表した事の影響は、単に高級品が売れな

いという事だけではありませんでした。

それまで一般の雑誌でもデザイン家電を中心にプロダクトデザインに

関する記事が多く掲載されて、世間の関心も高まっていたのですが、

リーマン以降ぱったりとそういう記事が無くなって生きました。

おそらく前年に発表していた色々な雑誌に取り上げられて世間の認知

は高まっていたでしょう。

しかしそういった厳しいスタートを支えてくれたのは、ショップのバ

イヤーの方々でした。

一番最初に製品を扱って下さったのは、六本木のミッドタウンにあっ

たステーショナリーショップ「5th Alley Studio」ですが、その店長さ

んだった切替さんとは今でも交流があります。

数年前には、別のデザイナーの方にも協力していただきラインナップ

の多様化と充実を図ろうと考え発足したのが「タケダデザインプロジ

ェクト」でした。

今では、江口海里さんのALIGN LINE、山口英文さんのミリセカンド

がラインナップに加わりました。

ミリセカンドの最初の製品であるアルミ削り出しのメジャーは、いみ

じくも自動車のアルミホイールを想起させるフォルムでしたが、まさ

に「F1カーから公道を走れるスポーツカー」に発展したカタチを具現

化したようでした。

世間の反響も高く、デザイン性の高さを証明するように、地元のツバ

メデザインコンクールでの最高賞を皮切りに文具大賞のグランプリ、

そしてドイツのIF賞にも輝きました。

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くしくも先月の末から「タケダデザインプロジェクト」の製品を扱っ

て下さる事になったネットショップ「リヴァドール」にこんな紹介文が

ありました。

「新潟県燕市は金属加工では日本有数の街です。

古くから洋食器をはじめとする金属加工に刃物加工のメーカーが数多

く存在します。

しかし、近年需要の落ち込みが激しく、廃業を余儀なくされるメーカ

ーもまた存在するのです。

その厳しい状況の中で、若い担い手たちが何とかしてこの素晴らしい

技術を継承し、そしてもう一度世の中に知って欲しい、その一心で試

行錯誤を繰り返してきました。

タケダデザインプロジェクトはまさにその象徴です。

技術者とデザイナーが一体となり、これまでには考えられなかった工

業製品を作り出したのです。

これはまさに商品ではなく、間違いなく作品と呼べるものになったの

です。

まだまだ露出も少なく認知度も低いブランドではありますが、今後も

っとメジャーになって行く事は間違いありません。

どうぞ、その作品を手にとってご覧ください。

きっとあなたの価値観が変わってくるはずです。」と。

プロダクトデザイナー 秋田道夫

11:19 AM