Archive of October 2020

October 30, 2020


課題を楽しむ

今日は、駒場にあるビンテージショップ「グラフィオ・ビューロスタイル」

に顔を出しました。

これまでイタリアの昔の製品を買ったりしているのですが、ショップのオ

ナーから『最近秋田さんの製品を集めているんですよ。』と嬉しいお話。

そして、写真のソニーのMDラックもその候補のようですが、中々(中古)

に出てこないそうです。

なにせ24年前(1996年の「アクセサリー」です。

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この製品にはちょっとした思い出があって、これを作ってくれメーカーの

担当者がタケダデザインの高地さんでした。この仕事を一緒にしてから10

年後にタケダデザインプロジェトの誕生につながったという意味でもキー

になる製品です。

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今ではすっかり聞かなくなったMD(ミニディスク)というメディアですが、

当時の企画の内容は『売り出し中のMD(メディア)を盛り上げるために

「MDを集めたくなるような」周辺製品を作りたい。』といったようなも

のだったと思います。

それで、一ダース用のコンパクトケースと、この収納ラックをデザイン

ました。

今更に思うのですが、依頼内容からどうしてここまでかたちが飛躍する

か自分でもわかりません。やりすぎですね。

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学校でいろいろな課題を出しますが、いつも思うのはそれを学生の皆さん

がどこまで課題を「過大解釈」をして広げて「楽しんでもらえるか」とい

うのが興味があるわけです。

そこそこではなく「行っちゃう」事です。

こんな製品ですか「行っちゃう」わたしはそう思います。


秋田道夫 2020/10/30


 MDラック.jpg

12:47 PM

October 22, 2020


テープカッター

テープカッター2つ.jpg

10:04 AM

October 19, 2020


軽やかである事

世の中には、語られて当然に思えるのになぜか語られていない事という

ものがありますが、プロダクトデザインの世界で言えば「プロダクトデ

ザイナーは絵が上手いのか?」というまったく素朴な疑問に対してあま

り語られません。実は、この仕事を長く続けているわたしにも他のデザ

イナーの絵の技量についてはわかりません。

一番わかりやすい例で言えば、日本のプロダクトデザイナーの代表であ

る柳宗理さんですが製品について描かれたスケッチを一枚も見た事があ

りません。ただ言えるのは、柳さんが東京芸大の油絵科出身の方なので

「絵が描けないはずがない」という事です。

_

プロダクトデザイナーを目指すには美術系大学にあるデザイン科に進学

するか、工学系の大学にある工業デザイン科に進学するか、専門学校に

ある工業デザイン科に進むのが定石ですが、美術系大学の最難関である

東京芸大では過去から現在に至るまで、「石膏デッサン」については高

いレベルで求められているので、東京芸大を出た人はほぼ自動的に石膏

デッサンは上手いと思っています。

しかし、それはあくまでも「石膏デッサン」の上手さであって「絵全体

が上手いか」という事に対しては絶対の正解かというとこれがまた微妙

です。

例えば野球選手がサッカーや器械体操が上手いとも限らない事と「少し」

似ています。運動神経にも様々な種類があります。「デザイン」という

のはあえて言えば「トライアスロン」な部分があって、表現力プラス発

想力プラス学習能力など様々な能力が「渾然一体」となって「デザイン

力」に至ります。

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そういった意味では「石膏デッサンは大学に入るための技能の一つ」な

んですが、同様に入試で課せられる色彩構成や立体構成というものより

も配点の加減はともかく「技量の差が見てわかりやすい」のが石膏デッ

サンなので、ある意味「花形課題」であり続けています。

さらに言えば、石膏デッサンはデザイン科だけで無く油絵科・彫刻科・

日本画科など美術科全体で実施されるのがこのでもあるので、ますます

その重要度が強化されます。

その「花形課題」の需要に答えるべく美術予備校の合格者であるOBの

技術伝承も長年続いていてますます技術は蓄積されています。

わたしも一年浪人して美術予備校で学びましたから、入学当初ほとんど

描けない人が入試直前には見違えるほど上手になっていくのを目の当た

りにしています。

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しかし一般の大学でもそうでしょうが、いったん合格してしまうとそれ

まで「あんなに一生懸命覚えた」知識を入った瞬間に「霧散」するよう

に、無事試験に合格してしまうと、それまであんなに熱心に描いていた

石膏も静物も自分の記憶から消える人は少なくありません。

そこで本来絵が取り立てて好きではなかった人は、あえて絵を描かなく

なります。絵が好きでも無いのにデザインに進むのかとこれまた素朴な

疑問があるでしょうが「モノ作りが好き」「機械に関心がある」という

人は必ずしも絵の技量に進学理由はありません。

『この人は昔から絵を描くのが好きで子供の頃から上手だったろうな。』

という人をデザイン科の中で感じた経験がほとんどありません。

インタビュー記事では子供の頃から絵を描くのが好きでという話を良く

見ますが、言えるのは学校ではその過去の得手とデザインの課題での結

果に「脈絡が見えない」という事だと思います。

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実際に大学に入れば「デッサンは得手ではなかった人たちの逆襲(?)」

が始まります。

色彩感覚の優れた人は素敵なポスターを作り、モノ作りが得意だった人

が目を見張るような完成度の高い模型を作ります。

石膏デッサンだけに特化した人は、次第にその存在感を失って行きます。

つまりなぜデザイナーが、絵を見せなくなるかと言えば、それがデザイ

ンの全てではないと知っているからで、今更入試時のデッサンの上手さ

をいうのは「恥ずかしい」というところです。

_

そんな「はずかしい」を越えて自慢をするわけですが、この三枚は大学

時代に描いたものです。

最初の絵は大学に入って間も無くに描いたもので、まだ石膏デッサンの

「呪縛」から離れられない頃の絵です。

二枚目は、3年生の時に収納という課題で描いた「工具箱」です。

三枚目は、4年生の時に写真集を見ながら描いた奈良中宮寺の「菩薩半

跏像」です。

この三枚を通して何が言いたいかと言えば、次第に「面」から「線」に

関心が移行している事です。

いかに少ない線で立体を表現するかが大事な事と考えていました。

「半跏像」のおでこを表現した「あるかないかの細い線」は、今では

再現できません。

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しっかり時間をかけて写真見たいな絵を描く人は、少なくありませんが

実は「軽やかに線で描く人」にはなかなか出会えません。

多くの場合、描くという事に対して慎重かつ行為が重いのです。

「さらさら」というのが案外に難しい。

大学や予備校の中で大した腕前でなくても一般のレベルからすれば「抜

けて上手い」わけでそれ以上の上手さというのは「過剰品質」です。

それよりは説明するためのスケッチを簡単にすばやく描くという方が価

値があるとわたしは思っていますが、実はクロッキー(短時間で表現す

る」で描くというのは、時間をかけて描きあげる事とは似ていなる行為

です。

四枚目は、15年前に製品になったキャノンの大型BJプリンターの「最初

期」のイメージスケッチを「今」再現したものです。

再現とは言え、当時のスケッチもほぼこのレベルです。しかしこの「退

化」した絵で事が始まって製品になったのです。

馬頭.jpgのサムネール画像

MICHIOAKITAアーカイブポスター.jpg

弥勒菩薩.jpg

BJラフ.jpg

10:45 AM

October 15, 2020


過去の今

御茶ノ水駅から神田に向かって下の坂道があるのですが、以前はその坂

下を右折した先にある神田藪蕎麦に足繁く通っていました。

そこに新しいビルが建ってから気になったのが、玄関ロビーの右にある

ガラスで仕切られた2台分の公衆電話スペースでした。

なぜ気になったかと言えば、そこにこの絵の「兄弟機」が置かれていた

んです。実は、今から20年以上前のお話です。

この絵は、ヨーロッパのカフェやレストランで使用する目的で作られた

簡易型の公衆電話です。

すっかりその事を忘れていたんですが、つい最近かつて家で使われる電

話機が自由に選べるようになって様々な優れたデザインの製品があった

事を思い出した際に『そう言えば、電話機をデザインしたなあ。』と回

顧した次第です。メーカーは国内外の公衆電話を多く生産していたアン

リツです。どういった経緯でその仕事をさせてもらうようになったかと

いう事も記憶にありません。ただわたし自身「大好きなデザイン」だっ

たので、調べてみたら小さく写っている写真を見つけました。

それは海外マーケッティングをされている方の紹介写真でした。

今でもアンリツ本社にあるショールームに飾られているようです。

その小さい写真を元に3Dで再現しました。そうやって置いてもらってい

るという事は、少しはヒットしたのかなと想像します。

 annritu denwa.jpg

5:48 PM

October 12, 2020


80mm物語

「80mm物語」

『80mmが出来ました。』と連絡がありました。およそ一年ぶりです。

『暖かくなったら作ります。』とうかがっていましたが、季節は巡り結

果的には寒くなってからになりました。

このことからもわかるように、見た目はとても「プロダクト製品」その

ものの80mmですが、人の意のままにならないとてもデリケートでヤン

チャな「生き物」なんです。(80mmはわたしのカタチだなと思ってい

ますが、有り様までわたしそのものです)

そんな80mmがいかに生き物かという「いきものがたり」を書こうかと

思います。

80mm最大の特長は、二重構造で出来ている事です。

その事によって、熱いお茶を入れても持って熱くないという機能を生み

出しているわけです。

ちなみに二重になったのは「結果論」で、湯飲みの内部の角に茶渋が付

くのが嫌なので「底を大きく丸くしたい」という事が結果的に「二重」

になったのです。

しかしその大きなメリットと引き換えに、大きなデメリットも生まれま

した。それは「作るのが難しい」事です。

二重構造を可能にしているのは「どぶ漬け」という技法です。

どういう事かと言えば、シャブシャブに薄めた陶土を型に流し込んで、

型内部の内と外に陶土が付着して厚みを増したら、それ以外の陶土液を

排泥して乾燥させて型から抜き取るのです。

今回暖かくなってからと言われたのは、型抜きの際乾燥が大事なポイン

であるからです。一年の中で「適切」な時期が半分にも満たない事に

なります。

同じ手法を使った他の製品ではたやすく型から取り出せるのですが、

80mmは一部が型に残って「破れ」たりします。

ただでさえ難しいのにその「どぶ漬け」という技法をやっているメーカ

がどんどん無くなっています。

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瀬戸物の発祥の地である瀬戸市ですが、海外の安い製品が大量に国内に

回るようになって、昭和40年代最盛期だった頃に比べて半分まで工場

が減っています。(今ではもっと減っているでしょうね)

そういう時代の変化を敏感に感じ取って「デザイン性が高く高付加価値

製品を作り出そう」と一念発起して大橋さんのお兄さんが、1973年に

立ち上げたのが、セラミックジャパンです。

くしくも1973年は、瀬戸市に近い愛知県立芸大にわたしが入学した年で

あります。

ちなみにその年は石油ショックが起きて「トイレットペーパーパニック」

が起きた年です。きっと創業当時、大変だったと思います。

セラミックジャパンには、トネリコやネンドをはじめ有名なデザイナー

製品が数多く存在しますが、代表的な製品には小松誠さんデザインの

紙をくしゃくしゃっとした感じを再現した「クリンクルシリーズ」があ

ります。 


80mmが誕生したのは2004年の事ですが実際に製品化されたのは2006

です。厳密にいえば製品化というよりは「量産化」でした。というの

時イオン向の冷蔵庫と洗濯機をデザインしていてそのキャンペーン

としてなにか購入者に「プレゼント」をしたいという企画の方のお話が

あって『こんなものをデザインしています。』とお見せしたのが80mm

でした。

話はとんとん拍子に進んで、実際かたちになったわけですが、その時に

られたのは2個セットになったものを1000個。2000個の80mmが

生しました。

冷蔵庫も洗濯機も良く売れたので、早々にプレゼント品も消えていきま

した。

自分で売るためのモノもその後お願いして作りましたが、結局「製品」

して独り立ちしないまま立ち消えになりました。 _

その2年後だったでしょうか、一通のメールが届きました。川畑さんと

う方からのもので『80mmを結婚式の引出物として買えないでしょう

か。』という内容でした。

その後、駅前の喫茶店で川畑さんご夫婦とお会いしてお二人の80mm

伺って『それでは、もう一回作ってみましょう。』という事で製品と

て80mmを再び作り始めたわけです。

_

わたしの中では、そのイオンでの成功体験というか2000個を作れたと

いう実績のイメージが残っているものですからどんどん量産されてく

る80mmを「どうさばくか」というエセ商売人メンタルで、皮算用を

しておりました。

その頃ちょうどアフターアワーズの横田さんがお店を始められた頃で

お店で売るものとして80mmを買ってもらったりしました。

実際、売り出したらネットを通して良くれて、最初の「心配」はひと

まず無くなりましたが、今度はぱたっと作れなくなってしまいました。

先にも書きましたが、80mmはセラミックジャパンから「どぶ漬け」

技術に委託された工場で作ってもらっていましたが、あまりにも「80

mm」は成功率が低いわけで、多少製造費を上げてもらてもらっても

やりたくないということがわかりました。

最初に2000個出来たものがその後12年間トータルしてもその2000個

達していません。

良く出来た年でも年間で150個という感じではなかったかと思います。

まさに絶滅危惧種です。

その危惧種に一筋の光が当たったのが、セラミックジャパンの中に新

い工房が出来た事です。そこで難しい「どぶ漬け」の技術で80mm

の型抜きの作業をしてもらえるようになった事です。

しかし他の作業もされている方が、その合間に作ってもらうのでこれ

らもコンスタントにできるようにはなりません。

ここ数年は、京都にある職人.comさんで独占販売(おおげさですが)

してもらっていましたが、あらためて「商業ベース」にはこの80m

mが適していない事を痛感しました。 


今、わたしのECサイトを準備中です。

ようはネット販売のお店を作るわけですが最初の商品をこの80mm

しょうと思っています。(現状ではわたしが手がてた製品をそのEC

サイトで扱うことは考えていません)

さらに申し訳ないお話しですが、値段を3000円(税別)に上げようと

思っています。ふつう値上げの理由は「原材料費の高騰」だったりし

ますが、この場合「ほんとに作れない」という事と、それ以上に言え

るのは「80mmにプライドをプレゼントしたい」といういきものなら

ではの由です。

3000円で80mmが喜ぶかどうかはわかりませんが、ふつうの湯飲み

では考えられない値段です。作家性と量産性の間でしょうか。

秋田道夫

2020/10/12

80mmfusion.jpg

11:07 AM

October 8, 2020


足元デザイン

 yueikatarogu.jpg

https://www.yueicaster.co.jp/products/catalog/yscs/html5.html#page=1

今仕事をさせて頂いているユーエイの新製品のカタログです。

これはキャスター内部に発電システムが組み込まれていてそれを使って

信号が発信されるようになっています。

例えば、工場内部のどこに荷物(台車)があるかを把握できますし、

導線やどれぐらい移動したかを計測してデータを蓄積できるようになる

わけです。

スーパーにあってお客さんがどの売り場に「集まるか」というものも

わかるし、そうなるとどの棚になにを置くのが効率的に売れるかを推測

するよりどころにもなるわけです。

正直これは「仮説力」と「イメージ力」によってどれだけ「化けるか」

わかりません。スマホが誕生した時にこんなに生活を変える事をだれも

予測しなかったように、「足元」から社会を変えるかもしれません。

そういう画期的な新製品なので、カタログのデザインを一新しました。

いろいろな意味で「スマート」です。

秋田道夫

2020/10/8

9:18 AM

October 5, 2020


土鍋

土鍋.jpg

土鍋蓋開き.png

土鍋のシーズンが近づいたからというわけではありませんが、以前触れ

た3Dソフトでdo-nabeを描いてみました。

このソフトなにがすごいかと言えば、円柱の塊を描いて「厚みを3ミリ」

と入力すると、一瞬で塊が3ミリ厚の土鍋に変わります。側面だけで無く

底の厚みも3ミリ、さらに取手の凹み部分にも均等に3ミリの厚みになる

ところがすごいのです。

描くのにかかった時間は、すでにあるものをサイズを気にせず再現した

ので一時間ほどしかかかっていません。おそろしい。

しかもレンダリング(描画)のスピードもすごくて、この品質なら5分

しかかかりません。すごすぎます。

秋田道夫

2020/10/5

9:27 AM